上級システムアドミニストレータ連絡会は、2000年3月30日付で、通産大臣の
認定試験機関である
財団法人日本情報処理開発協会/情報処理技術者試験センター
情報処理技術者試験評議委員会がパブリックコメントを募集していた
「情報処理技術
者試験改革について」に関する意見をまとめ、同評議委員会事務局に提出しました。
以下にその全文を掲載します。


「情報処理技術者試験改革について」に関する意見
                           2000年3月30日
                           上級シスアド連絡会

上級システムアドミニストレータ連絡会(以下当連絡会)は上級シスアドの合格者、
受験予定者等を中心に、現在約120名のメンバーによって構成され、メーリング
リストや研修会など、上級シスアド相互の情報交換と研鑽のための活動を自主的に
企画し、運営を行っている任意団体です。

*当連絡会の概要や活動内容については、下記ホームページをご参照ください。
 
http://www.jsdg.org

さて、標記の件、当連絡会としての意見を下記の通りとりまとめましたので、今後
の試験制度改革に当たっての参考としていただければ幸いに存じます。

[目次]
  
1.上級シスアドの人材像について
   
(1)当連絡会メンバーの特徴(多様性と共通性)
   (2)当連絡会にて議論されている上級シスアドのあるべきミッション

  
2.試験制度改革の方向性について
   
(1)上級シスアドをめぐる現状の評価
   
(2)試験制度改革に関する提言

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1.上級シスアドの人材像について

 
(1)当連絡会メンバーの特徴(多様性と共通性)

  (a)所属団体、部門などの多様性

   当連絡会メンバーの所属する企業等の団体、所属する団体内における部門、
   職位、職務など、27歳以上という受験資格以外の要素については、極めて
   多様性に富むものとなっております。→
当連絡会会員名簿

   @)規模
    メンバーの所属する企業等の団体の規模は、大企業から中小企業、自営業
    まで、幅広く分布しています。

   A)業種
    ユーザ企業等(製造業、金融業、官公庁、病院、学校等)を中心に、IT
    ベンダー企業も相当のウエイトを占めています。
    また、自営業については、中小企業診断士や税理士などが主なものです。

   B)部門
    企画、総務、人事、経理、営業、生産管理、研究開発など、本試験が想定
    するコンピュータシステムの利用部門を中心に、情報システム部門に所属
    する者も含め、多岐にわたっています。
   
   C)職務・職位
    所属する部門内での担当業務、役職、職務権限なども様々で、各人各様と
    言えます。      

  (b)上級シスアドとしての共通性

   上記の通り、当連絡会のメンバー構成の外面的な属性からは特段の共通性は
   ないものの、各々の団体・組織内で求められる役割や職務に対するスタンス
   といった面については、以下に示すようなある種の共通性を認めうるものと
   考えられます。

  @)業務・情報システム構築における「キーマン」としての位置づけ
    所属する部門に関わらず、利用者の立場で、業務システム・情報システム
    の企画・開発・運用のいずれかの局面に(多くの場合、全ての局面に一貫
    して)キーマンとして現在参画しているか、または過去にそういった経験
    を持っている。

  A)「コーディネータ」としての役回り
    多数の関係者(上司・関係先、エンドユーザ、社外ベンダー等)間の意見
    ・要望を総合し、プロジェクト全体を齟齬のないようにまとめていくなど、
    アウトプットを最適化するためのコーディネーションを行う。
    (当該プロジェクトに関して自ら意思決定を行うか、権限を持つ職位の者
    に提言を行う)

  B)「プレイング・マネジャー」としての性格
    上級シスアドは、必ずしも部下を持って仕事をする「管理者」ではなく、
    関係者との連携を図りながら自らのタスクを遂行するという、プレイング
    ・マネジャーとしての性格が強い。

  C)業務・IT双方のスキルを持つ「情報リテラシー教育のリーダ」的存在
    業務とITに関するスキル(知識・ノウハウ)の双方をもち、それを必要
    に応じて、上記の役割遂行の様々な場面で、適切に応用することができる。
    このスキルはいわゆる「情報リテラシー」の領域に属し、上級シスアドは
    自らその実践を通じて、エンドユーザや後進の支援・指導・育成にあたる
    ケースが多い。

 
(2)当連絡会にて議論されている上級シスアドのあるべきミッション

  現在、当連絡会において、「上級シスアドのあるべきミッション(使命・役割)
  とは何か」というテーマについて、メーリングリスト等の場で、活発な議論が
  行われています。

  議論のプロセスとしては、当連絡会の各メンバーが自らの経験を振り返りつつ、
  上級シスアドの今後のあるべき姿、可能性を模索していくといったものです。
  ここでは、その中で提示された意見のいくつかをご紹介させていただきます。

  ・上級シスアドは独立した職種ではなく所属母体のなかで組織や人とつながり
   を持ちながら仕事をしていく人材ではないか。さらに、中小企業診断士や、
   税理士など独立性の高い職種にある者が、上級シスアドとして顧客の立場で
   業務を行うことに対する社会的なニーズも高まってくるのではないか。

  ・「情報リテラシー」は、全ての人間が共通に習得するべきスキルのひとつで
   あるが、各人の職務遂行能力や期待される役割に応じてその内容を吟味し、
   必要にして十分な教育を与えていく必要がある。上級シスアドはその具体化
   と実行推進を担うのに相応しい人材ではないか。

  ・企業の情報システム部門は、広い意味での(上級)シスアドとしての役割を
   担うべきではないか。その点で、システムアナリストと上級シスアドの人材
   像は、結果的に近づく部分が多くなるのではないか。

  ・上級シスアドは利用部門におけるITコーディネータとなるべきではないか。

  ・現在、企業の中で実務に近い立場にある上級シスアドが、近い将来管理職や
   経営者となっていくことが予想されるが、それにより企業の戦略的な情報化
   が従来以上に促進されていくのではないか。

  ・地域社会(学校・家庭などを含む)の情報ネットワーク化が進展していくと、
   教員や児童、主婦、シニア層などにもITの活用能力の向上が求められると
   ともに、その能力を発揮して人の育成や地域の活性化を実現させ得るリーダ
   的存在が必要になってくるのではないか。ここにも上級シスアドの活躍の場
   があるのではないか。 

  このように、上級シスアドは、所属する組織における業務の改善や人材育成の
  実践を通じ、組織や社会が直面する諸課題の解決にあたることができるのでは
  ないか、という趣旨の意見が多く出され、当連絡会における基本的な共通認識
  となりつつあります。

2.試験制度改革の方向性について

 
(1)上級シスアドをめぐる現状の評価

 (a)上級シスアドの実態と試験制度との対応

 以上に述べた通り、当連絡会のメンバー構成とその活動状況から浮かび上がって
 くる上級シスアドの人材像は、その外面的な多様性の一方で本質における共通性
 に、他の情報処理技術者とは大きく異なる特質を持っているものと言えます。

 しかし、このことは、本試験制度が想定しているように、

「利用者部門において業務の改善,経営課題の達成ということを常に考慮しながら,
 情報処理技術を活用した業務の効率化,利用者部門の情報リテラシーの向上を図
 る役割を担う」
 
 という上級シスアドの人材像にほぼ重なるものであり、その点で試験制度の趣旨
 にかなった実体(受験・実務)が実現しつつあると評価し得るのではないか、と
 考えております。

 当連絡会のメンバーのなかには、上級シスアド試験の存在を知った時に「まさに
 これは自分のための試験ではないか」と感じ、実際に受験・合格された方も多数
 おられます。

 (b)上級シスアドの量的・質的強化の必要性

 ITの急速な発展とその幅広い分野での活用がなされている中で、上級シスアド
 のみで全てのシステム開発・運用を行うことはもとより不可能ですが、
 ・いわゆるスパイラル型ないしプロトタイピング型の開発手法が一般的になり、
 ・システムの運用についても、エンドユーザコンピューティングが定着してきた
 という現状を考えると、(上級)シスアドの参画なくしては、優れたシステムの
 構築・運用は困難になってきているとも考えられます。

 上級シスアド試験は発足後4回が実施されたばかりであり、合格者数もまだ絶対
 的に不足、あるいは実務実態との相当の乖離があると言わざるをえません。
 また、他の情報処理技術者の人材類型との比較においても、(上級)シスアドの
 社会的認知度は、まだかなり低い状況にあります。

 現在、累計で1259名の上級シスアド合格者が存在しておりますが、受験予定
 者を含め、合格はしていないけれども、所属する組織等において、上級シスアド
 としての職務を担当し、あるいはその役割を期待されている方も潜在的にかなり
 の数にのぼるのではないかと推察されます。

 これらの「潜在的上級シスアド」に対して継続的に政府が知識・技能水準を認定
 していくことは、本人の体系的なスキル習得はもちろん、その所属する組織内で
 の課題解決を促進し、結果として、量的にも質的にも上級シスアドの社会的認知
 度や評価を向上させることにつながるのではないかと考えられます。

 こうした事情に鑑み、当連絡会としては、現行の上級シスアドに関する人材像、
 試験制度の趣旨の一層の強化・充実を図るとともに、その量的拡大と質的向上の
 ための取り組みを推進していく必要があると考えます。

 
(2)試験制度改革に関する提言

 最後に、前項で述べたような上級シスアドの量的・質的強化の取り組みの一環と
 しての試験制度改革の検討に際し、ぜひともご考慮いただきたい事項について、
 提言させていただきたいと存じます。

 上級シスアド試験については、先述の通りまだ4回目の試験が実施されたばかり
 であり、短期間のうちに大きな制度変更を行うとすれば、
 ・上級シスアドの実態や、今後求められる人材像により相応しい制度として迅速
  に対応しうる(制度としての陳腐化の回避)といったメリットもある反面、
 ・受験者に無用の混乱をもたらすこととなったり、過去の合格者のイメージ低下
 (例えば旧制度下での合格者であるとのマイナス評価)懸念のようなデメリット
 も予想されることから、慎重に対処すべきと考えます。

 特に、試験制度の想定する人材像については、
 ・上級シスアドとしての「共通性」(所属する組織等における位置づけや、期待
  される役割など「ミッション」としての諸属性)を的確に織り込むとともに、
 ・上記「共通性」から導かれる、実在する上級シスアドの「多様性」(該当する
  能力・経験の持ち主が、非常に多様な社会的立場にわたっているという事実)
  にも十分配慮し、
 あくまでも標準的な「モデル」にとどめておくこと、換言すればあまりリジッド
 な定義は敢えて行わないことが、却って上級シスアドの可能性を高め、より多く
 の受験者に門戸を開くことにもつながると考えます。

 以上の通り、上級シスアドの人材像を一層明確化するともに、試験制度について
 は、形式面からの変更を加えることよりも、現状との適合性担保と将来ビジョン
 の提示という両側面において、その内容を実質面から見直していくことで、より
 息の長い制度として定着・発展していけるよう、努力していく必要があると考え
 ております。  


                                  以 上